創建緣起
仏教の深遠な教理と悠久な歴史・文化は、古来より豊かで輝かしい芸術を創り出してきました。数千年にわたって蓄積された仏教文化の恵みが、中国と全世界の文明において偉大なる芸術の世界と精神的目標を形成したのです。有形であれ無形であれ、それは世代に受け継がれて豊かな実を結び、伝統芸術をより豊かにしたばかりでなく、人類の文化における貴重な宝となりました。「無情説法有情聴」(無生命の説法を命ある人間が聴く)――敬虔な造像をもって千古の文物が無言の説法で人々の心を導いて開く。それは仏法の伝承であり、社会の風俗習慣を変え、心を浄化する妙法でもありました。
霊泉寺から中台禅寺に至るまで、開山住職である惟覚安公大和尚は教法を広め、教理を説き、四衆の弟子を導きながら五大志向――「仏法の学術化、仏法の教育化、仏法の芸術化、仏法の科学化、仏法の生活化」を掲げました。このうちの「仏法の芸術化」は、仏教文物や歴史・文化を伝承することで、芸術により世を感化することを目指すものです。
多年にわたり、惟覚和尚の慈悲願行に応える国内外の善男善女が歴代の文物を熱心に寄贈すると共に、中台山もまた仏教文物の修復と保存に積極的に取り組んで参りました。仏教文物には歴史や文化を体現し、深遠な教理を伝える力ばかりでなく、社会を浄化し人々の心を開く力も備えています。このため、心をもって本とし、仏教の慈悲、平等、知恵などの精神をもって体とし、仏教芸術の美をもって相とし、仏教芸術と学術化、教育化、生活化、科学化を融合させて用とすることを目指し、2009年に中台山博物館が設立されました。世界の経済発展がもたらすインパクトと歴史的な災害が続く中、仏教文物や遺跡の保存・修復は、今や仏弟子にとって喫緊の課題と責任です。中台世界博物館及び木彫分館の建設は、仏教を現代に広める重大な使命を背負っており、台湾南投県の埔里盆地にあって、その雄大な姿で古の文明が持つ豊かさと奥深さを世界に伝えています。こうして中台山博物館は博物館を通じて仏教を視覚的に伝える場となりました。